何も始まらない、何も終わらない

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「とらのあな」の中は、なにかに荒らされたかのように、商品が床に落ちていたり、破られたり、酷いものでは燃やされたかのように荒らされていた  酷い……。一帯この秋葉原に何があったんだ……?  予想するに、この「とらのあな」のように、秋葉原にあるほとんどすべての店がこんな風になっているだろう  どことなく、何か焼け焦げたかのような臭いがする……。  近くにあった、一つの同人誌を取る  触った瞬間、驚き、その同人誌を落としてしまった 「濡れてる……」  どの同人誌も、すべて何か、水のようなもので濡れたかのように湿っているのだ  部屋の回りも見てみた 「!? 焼け焦げた、後!?」  白い壁には、何かによって燃えたかのように、焦げ茶色に壁の色が変色していた  焼け焦げたような臭いはこれだったのか? 「焦げた後からして……まだ、三日も経ってない、な……」  なにか、火事のようなものが起きたのか? 「うひゃ!?」  首筋に、何か冷やりとするようなものがあたった 「水?」  水が落ちてきた方向は、天井だった  天井に顔を向ける  そこにあったのは―――――― 「スプリンクラー……?」  じゃあ……もしかして、本当に火事か何かが起こったのか!?  まだ確信はもてない……だけど、これって――…… 「だ……れか……」 「!?」  上の階から、人の声が聞こえた  体が足が勝手に動くかのように階段を駆け上り、二階、三階を通り越し、四階に来ていた 「チル乃コーナ ⑨は俺の嫁だ!」と書かれた所に、商品棚の下敷きにされている、日本人形のように黒い、長い髪の〝女の子〟がいた 「だ、大丈夫!?」  ピクリッと女の子が反応する 「そこに誰かいるのか?」 「あ、うん。君を助けに着たんだ!」 「そ、そか……」 「まってて、すぐにこれを退(ど)かすから」  商品棚は見た目と裏腹に、意外と軽かった
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