序章。

4/6
前へ
/128ページ
次へ
「ただいまぁ」 玄関をくぐり、発した声に返事はない。当たり前だ。今家には俺しかいないんだから。 でも「ただいま」と言ってしまうのは習慣の様なものだろう。もしかしたら返事が返ってくるかもしれない、そんな淡い期待があるのかもしれないが。 しかし淡い期待がかなえられることは決してないのは俺が一番よく知っている。 俺の両親は仕事の関係でめったに帰ってこない。 今より子供のころは違ったんだが、中学生になったあたりで家に帰る回数は減り始め、今年高校に入ってからなんて帰ってきたのは1回のみ。 なんとも放任主義だ。今は慣れはしたものの中学のころは寂しくなかったと言えば嘘になるし、今も時々顔くらいは見たくなる。 1人暮らし、と聞くと当初は憧れとかあったが今では面倒なだけだ。特に掃除とか......3人で暮らせる広さのマンションで1人で掃除とか怠い。 スクールバックを投げ捨て、ソファにダイブ。 「あっちぃ......」 窓からさす日差しが憎い。 今日は学校が早く終わったので、まだまだ夏の昼過ぎ。室内はサウナのようだ。たまらずクーラーをつける。 考えるのは夏休みのこと。 学園でも考えたが、夏休みの予定がすっからかんだ。もし手帳とかに書きこんだら驚きの白さになるだろう。 自分で考えてて悲しくなってきた......
/128ページ

最初のコメントを投稿しよう!

989人が本棚に入れています
本棚に追加