序章。

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まだ寝ぼけて変なものでも見てるのかと思って、目を擦るけど変化はない。 線だ。 色は黒。丁度玄関の途中あたりにある。斜めに入った線で、真っ直ぐではなく少し歪で俺の背より長めの線。 それが空中に浮いている、ように見える。てっきり壁か何かに変な汚れでもついたのかとも思ったけど、完全に独立していて線はどこにも触れていない。 線に触れないように線の周りを見るけど、やっぱり浮いている。太さはあんまりない。直径1ミリとかそんなもん。線は全く動かず、空中に固定されてた。 空間そのものに切れ目を入れたようにも見える。裂け目みたいだ、そんな風に思った。 なんだ?まだ夢でも見てるのか?でもこれは夢じゃない。夢だったらこんな鮮明なわけがない。 「......」 意味が分からない。頭が軽く混乱している中、ふと、考えが浮かんだ。 これ、触っても平気かな? ほんの少しの好奇心。思わず唾をのむ。恐る恐る手を伸ばす。 そして指先が触れる寸前、 『―――――』 「え?」 誰かの声がした。かと思うと、1次元的な線は3次元的な空間へと広がり、俺を飲み込んだ。
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