もういくつ寝ると…

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「巴、どうします?」 学校帰りに樹が突然言ったのは、樹の誕生日の翌々日、12月27日のことだった。 「なにを?」 「誕生日です」 「誰の?」 樹ってば、いちいち主語がないからわからない。 「単と龍司さんのですよ」 樹に言われてはっとした。 そういえば、1月3日は龍司さんの誕生日だ。 龍司さんっていうのは、僕の叔父さんだ。 「単さんも?」 単さんは樹のお父さんで、樹は僕の恋人だ。 元々高校の先輩後輩だった単さんと龍司さんも今では恋人同士になって、この大きな樹の家にみんなで暮らしている。 僕もちゃっかり居候させてもらってるんだけど。 「ああ、言ってありませんでしたか。単の誕生日は1月1日ですよ」 「聞いてない。でも、おめでたい日なんだね。で、何かいい案でも?」 もう、あまり日がない。 「あくまでも僕の考えですが…ペアのキーケースなんてどうでしょうか。単がキーホルダーが壊れて困ったと言ってたんです」 「それはいいかもしれない。龍司さんなんて、鍵そのまんま持ち歩いてるし」 龍司さんはワイルドというかなんというか、鍵を紐で束ねて持ち歩いている。いつか、どれかをなくすんじゃないかと心配してたんだ。 「それでは、少し寄り道をしましょう」 「そうだね」 僕たちは、デパートに向かい、 まっすぐに革製品を置いている売り場に行った。 「これなんてどうかな?」 ショーケースの中には、黒い革製のキーケースが2つある。 「そうですねえ。いいとは思いますが、単は結構シャイですから、はっきりペアだとわかると使わないかもしれません」 「…そっか」 単さんはいつもクールで、そういえば、龍司さんとイチャイチャしてる姿も見かけない。 それならば、と別の物を探していると、ちょうどいいものを見つけた。 「龍司さんの、これはどう?」 それは、さっき見たのに菱形のスタッズが3つ付いたキーケースだった。 「いいですね。龍司さんっぽいです。せっかくだから、ちょっとイタズラをしてみましょう」 樹はにやりと笑った。
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