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目覚めた時
全ての記憶がなかった
白い壁に囲まれた部屋を
動けない体と
心配で涙する中年の女性を思い出せない
苦痛で過ごした
何度も
何度も
繰り返し名を呼ばれ
自分の名前と理解をし
何度も
何度も
繰り返し母と名のられ
それが母だと認識した
「頭…痛い」
雨の中
僕を抱きしめ
名を呼んだ
毎日同じ空間を過ごす『彼』
思い詰めた目をして
人違いだと否定した
それだけ
ただ
それだけなのに
あふれる涙が止まらないのは
何故だろう
ベンチの前
落ちた傘を拾うことなく
『彼』を想い涙に濡れた
[痛みになる日 -空間-]
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