突然の誘い

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~場所は変わって作業場~ 柊はまだ色も塗られていない、機会も入っていないギターのパーツを手に取り熱心に見つめていた。 その後方で腕を組んで様子を見ていた録人の父親、信太郎が口を開く。 「どうだい?ボディもネックも柊ちゃんの要望に応えるようにがんばったんだよ?」 その質問に柊は笑顔で答える。 「はい!すごいです!素晴らしいです!とても気に入りました!」 「よかった。俺もそのギターには俺も自信があるよ。君のこだわりに応えようと1年かけたんだから」 そうとう苦労して作り上げたのか、信太郎はその日々を思い出し、遠くを見るような目をしている。 「はい、本当にありがとうございました。私のわがままを聞いてもらって。どうしても、私にとって最高のギターが欲しかったもので…」 柊は申し訳なさそうにしている。 「ま、君のその気持ちが俺をうごかしたんだよ。で、ひとつ聞きたいんだがそのギターを頼みに来た時に言ってた、最高のメンバーでバンドを組むって話どうなったんだい?集まったのかい?」 その質問に柊は表情が暗くなった。 「いえ…。実は中々集まらなくて…。友達にも声かけたりしてるんですが中々私とバンドを組みたいなんて人なかなか居なくて…」 「そっか。まぁ、気長にメンバーを集めるのもいいよ。でも、なんでそんなにバンドにこだわるんだい?」 柊は真剣な表情になる。 「…私にギターを音楽の素晴らしさを教えてくれた人の夢だったんです。最高の仲間達と組んだバンドで自分達の音楽を奏でる事が。 その人は途中で諦めたらしいですが」
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