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水島巧がそれを見つけたのは、裏バイト掲示板を見ていた時だった。
26になってもフリーターだったが、それでも普通に生活出来ていたし、これと言った不満もなく、それなりに毎日を過ごしていた。
ただなんとなく刺激を求めて掲示板に書かれたヤバそうな仕事をチェックし、どんな事をするのだろうと想像を膨らませていただけ。
そんな中、気になるタイトルを見つけたのだった。
『真実の絆ゲーム』
数人の仲間たちと一ヶ月のモニター生活を送るだけ
生活の中で簡単なクエストをクリアするだけで高額賞金
若干名募集
こんな内容だった。
申し込みリンクを押すとメールソフトが起動し、メール作成画面が開く、このまま送信すれば申し込みが出来るらしい。
メールを送るとすぐに返信がある。
そのメールの申し込み最終確認リンクを押すと申し込みが完了し、面接会場の住所と日付が表示される。
先着順ではなく、その日に面接等を受けて、後日採用が決まるようだ。
その日、その場所、雑居ビル。
エレベータで、指定された5階に昇る。
このフロアの一室で面接。目的の部屋のチャイムを鳴らすと
「どうぞ、お入りください」と返事がある。
部屋に入ると、中央に長テーブル。その上にカメラ。そしてカメラの前にパイプ椅子。
テーブルの奥には誰もいなかった。
「お座りください」
天井からの声に不意を突かれ、ビクっと体が跳ね上がる。
天井を見ると、スピーカーが備え付けてあった。
面接官は姿を見せず、スピーカーとカメラだけの面接らしい。
この時は、そんな怪しさにすら少しワクワクしていた。
誰もいない面接。家族構成や仕事、借金の有無、休日の過ごし方など、取り留めのない事を聞かれる。
応募の動機は、共同生活の中で深まる絆を確かめたいだとか何だとか適当に答えておいた。
そんな日常とは異質の体験にちょっとした冒険心は満たされ、数日後、合格通知が届いた時には『真実の絆ゲーム』の事なんてすっかり忘れていたし、もう面倒臭いとすら思えていた。
封を開けて通知を読むと、一ヶ月の生活費や諸経費はすべて運営負担で金銭的負担はゼロ。クリーニングなども運営が行うので、数日分の着替えだけ用意すれば良いとの事だった。
「一ヶ月、食費や光熱費が浮くならいいか」
バイトも変えようかなと思っていたし、賞金も出るみたいだし、こんな経験も何か後の役に立つかもしれない。
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