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コタツから出たくないよ。
あったかくて天国だ。
そう言った僕に若者らしくないと言ったおじいちゃんは子供は風の子だろうがといきなりコタツから僕を引きずり出した。
「待って、僕もう16歳だって、子供って言う年じゃないよ」
「何を言うか、成人なのは日本国憲法では20歳と決められておる」
「えぇー、折角冬休みだって言うのに家でゆっくりしちゃいけないのかよ」
「それが若者らしくないと言ってるんだ」
ずるずるずる。
嫌がる僕のことなんてお構い無しにおじいちゃんは僕を玄関に引き摺っていく。
そして母に二人分のコートを持って来させて僕に着せてしまった。
「行くぞ」
それだけ言ったおじいちゃん、とっとと外に出て行ってしまった。
仕方が無い。
靴を履いて僕も外に出た。
おじいちゃんに連れられてきたのは近所の天神様だった。
三が日も明けてない境内に続く道には露店が幾つか並んでいて、流石に元日ほど賑わってはいないがそれなりに人が歩いていた。
初詣は昨日済ませたのにな、なんて思っているとおじいちゃんが一つの屋台の前に立ち止まった。
「これ、うまかったんだよ。
糖尿がどうのとか政子さんが煩いからお前を連れ出せば買い食いできるかと思ってな」
にかーっといたずらっ子のように笑うおじいちゃん。
僕よりも余程子供みたいだ。
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