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「これなんかお勧めですよ。
今が買いです」
いきなり道を歩く私の前に立ち塞がった怪しい男に引き摺られ駅前の珈琲ショップに連れ込まれて延々と話を聞かされているのだが、どう考えても怪しい。行動が謎過ぎるし。
いや、人物的には怪しいとは思えないのだけど。
きちんとダークグレイのスーツを着て濃紺のネクタイを締めている、どこにでも居るビジネスマン風の男。
何で普通の学生の私の前に立ちはだかり経営に興味あるでしょとか言ってきたんだろ。
「私、経営コンサルタントをしているこういうものです」
きちんと名刺を差し出して挨拶をする普通に仕事の出来る人風の男。
何で普通の学生の私にこんな事をするんだろう。
「はあ」
そう言って受け取った名刺には『経営コンサルタント:安東昭二』と書かれていた。
「今ですね、学生の内に起業する人が多いんですよね。
それで私のような者の出番という訳ですよ。
貴女は起業に興味が有る顔をしていますよね。
それでお声を掛けさせていただいた、と」
「はあ」
実際会社を起こすなんて面倒な事はしたくない。
両親を見ていると切にそう思う。
休み無いもん、殆ど。
それに私はそんな事出来る身分じゃない。
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