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ちらりと後ろを見ると、2、3メートル離れて歩く彼がいて、少し緊張する。
スカートの襞とか変な風になってないかな、とか。
髪型崩れてないかな、とか。
歩き方変じゃないかな、とか。
こんな風に確認なんかしてて変に思われないかな、とか。
後ろ、歩けばよかった。
緊張したまま、駅に着く。
普段より道程が長く感じた。
階段も一段一段そわそわする。
「亜季」
突然、腕を引かれる。
ぼーっと考え事をしていたせいか、心臓が破裂するかと思うほどにビックリした。
「え、え?何?」
「その電車違うから。特別快速。止まらないよ」
「え、あ、え?」
まだ心臓がバクバク言っている。
「特別…」
ふと車両の表示を見ると、確かに特別快速の文字。これは止まる駅が少なく、私たちの下車駅では止まらない電車。
つい3日前に知った。
「びっくりした。ありが…わっ!?」
半ば反射的に体を半歩左へずらす。
目の前を降りる人たちが過ぎていった。
「あ、ああありがとう」
「どういたしまして」
満足そうににこっと笑う彼は余裕だ。
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