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「来たよ」
「あ、うん」
ホームに電車が進入してくるのが見える。先頭車両が横切り、次いで風が髪を乱す。
降りる人を待って、空いた透き間に人が流れ込むように入る。
流れ作業みたいで好きじゃない。
電車はあまり好きじゃない。
本当は自転車で通える近場の高校にしようかと思っていた。
でも彼がこの学校に志望していたから。
不純だってわかってる。
それでも顔を合わせる機会を少しでも増やしたかった。
斜向かいなんて、機会を作らなければほぼ会わないのと同じ。
そんなのイヤだ。
「香坂くん」
「ん?」
だって彼はこんなに優しい。
「私、平気だよ?」
今だって私が押し潰されないように気を遣ってくれている。
「気にすんな」
私にだけじゃない。
いつも優しい。
残酷だね。
だから好き。
ねぇ、お願い。
誰かを好きにならないで。
[斜向かい...終わり]
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