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庭園は昔と変わらず、様々な花が綺麗に咲き誇っている。キルシェはその庭に、二人の姿があることを確認すると声をかけた。
「ザカート、ディア。お茶にしましょう」
花のなかに見え隠れしていた二つの影が、名を呼ばれ姿を現す。
一人は、昔と全く変わらない姿のザカート。もう一人は、キルシェによく似た少し気の強そうな十五、六歳の少女。
二人は傍にあった台の上にハサミを置き手袋を外すと、キルシェたちのいるテーブルに向かった。
「うわー。美味しそうな、クッキー」
ディアが席に着き、おしぼりで手を拭くなり手を伸ばし、一枚取り頬張ると「うん」と、ご満悦の表情を浮かべた。
「おとうさま、おねえさま! このクッキー、ぼくが作ったんだよ」
ローレルは自慢げに、クッキーをのせた皿をザカートに差し出す。
「そうなのか。では、いただこうかな」
そう言い、皿から一枚取り口に運んだ。
ローレルはザカートの食べる姿をじっと見つめ、様子を窺っている。
「うん、旨いな」
パアッとローレルが表情を輝かせる。ザカートに頭を撫でられ、ローレルははにかみながら嬉しそうにしていた。
「ローレルは料理が好きなのか?」
「うーん。わかんないけど、すっごく楽しかったよ」
「そうか、楽しかったか」
「ふふっ、今度はケーキを焼くのよね」
「うん! あまーいイチゴがいっぱいのったケーキを作るんだぁ」
「それは、楽しみだな」
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