騎士

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 ◇ ◇ ◇ 街を見下ろせる小高い丘に、真っ白な外壁の城がある。ここが、この国の王の住む『ガルデニア城』だ。 普段以上に強化された警備のなか、城には絶え間なく馬車が着いている。馬車の中からは身なりの良い人たちが降り、次々と城の中に入って行く。彼らは近隣の王族や貴族の人間。今宵、開かれる晩餐会の為に集まっているのだ。 質素な外観と違い、城内は煌びやかだ。高価な装飾品が至るところに飾られ、色とりどりに活けられた花がその美しくさを引き立たせている。そして、客人を迎える従者たちと、警備にあたる騎士の多さで、国の持つ力も見せつけていた。 しかし、客人たちの殆どはそんなものには興味を示さない。 客人たちは謁見の間で主賓となるこの国の王に挨拶を済ませると、晩餐会が始まるまでの時間を各々の自由に過ごしていた。 長旅の疲れで、客間で休む者。 国の為、家の為、思索に動く者。 そして、独り身の若い男たちは、こぞって一人の女性のもとへ向かって行く。
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