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数か月後--。
本日警部が、しばらくぶりに神野のもとを訪れて言った。
「神野さん・・・・・今回の事件は、まったく解決していません。しかし、
警察としては、極秘扱いにして葬ります」
「・・・・・」
神野は黙ってうなずいた。
「でも、なぜか、これでよかった気がします・・・・・・。私には、とても
人間のしわざとは思えません・・・・・」
そう、警部は言い残して去っていった。
さらに半年が過ぎた。季節は秋を迎え、あの悪夢のようなクリスマ
スからもうすぐ1年が経とうとしている。
神野は無事会社に戻った。社内で広まったウワサも時間とともに、
いつしか消えていった。満員電車で職場に向かい、また電車に詰め込
まれて家に帰る。元の平凡な生活を続けている。
本田警部はすでに別の事件を担当している。あの事件の極秘捜査チ
ームも解散となり、事実上、迷宮入りとなった。
真由美の姉、梨花はいまだ心の傷を残したまま、医者の勧めもあっ
て、海の近くの親戚の家に引き取られた。少しずつ落ち着きを取り戻
しているという
一方、姉の真由美は、梨花に起きた不幸な出来事を乗り越え、大学
に戻った。姉がためてくれていた貯金とアルバイトで何とか自活して
いくメドがたった。一人の寂しさも手伝って、今でもときどき神野の
家に遊びに来る。
「本当に終わったんだ・・・・・」
神野は、平凡な日常のくり返しの中で実感していた。
今日も、自宅へ帰る電車の中、神野の隣りに座った少女が、楽しそう
に携帯電話を見ている。
「あれは、悪い夢だ・・・・・だったんだ」
神野は思う。今や日本人の二人に一人が携帯を待ち、Eメールを楽
しんでいる。万が一、あんな事件が明るみになったら、とんでもない
混乱が起きていたに違いない。
しかし、人工プログラムソフトは完全に消去した。もう二度と人の
手に渡ることはないだろう。あのような恐ろしいプログラムが・・・・・・。
「ピピピッ」
隣りの少女の携帯にメールが・・・・・
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