第6話

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ボウ然と「指」を見つめたまま、もう2時間は経っただろう。神野 に理由などわかるはずもなかった。ただ本能的に、 「隠さないと犯人にされる!」 そう思った。 考えたあげく、庭に埋めることにした。神野の部屋は一階で、小さな庭がついている。外で張り込んでいる刑事に気づかれないように、 穴を掘ってビンに埋めた。 部屋に戻り、もう一度よく考えた。 (イタズラにしては、残酷すぎる) 神野は人に恨まれるようなタイプではなかった。考えれば考えるほ どわからなくなるだけだった。やがて、日が昇り、夜が明けた。結 局、一睡もできずに、出社するはめになった。 神野は会社に着くとすぐメールを調べ始めた。メールはたしかに自 分が送ったことになっている。念のため、ほかにも自分が送受信者にな っているメールがないかを調べた。 一時間ほど経ったとき、神野の指が止まった。 (あった!) 震える手で開けてみた。件名には、あのメールと同じように 「down」と書かれている。そして本文には、「耳」という一文字が!「耳! いったい誰が」 神野の額に、大粒の汗が吹き出した。メールの送り先は友人の菊地 だった。そのとき、内線が鳴った。 「神野さんに警察の方がおみえです」 ロビーにかけ下りると、本田警部が待ち構えていた。 「今度は耳がなくなりました! また、あなたの友人です」 「やはり・・・・・・メールが・・・・・・」 と神野は心の中でつぶやいた。 本田警部はくわしい状況を話し始めた。 昨夜のこと。菊地が部屋で酒を飲んでいると携帯にメールが入った という。画面を見ると「耳」の文字が、くだらない冗談かと、そのま ま 寝入った菊地が朝起きて何気なく耳に触れると・・・・・・耳がきれいに削 がれてなくなっていたのだ。 「激しいショックで病院に入ってます。梨花さんと同じです」 「・・・・・」 「神野さん、送信者は・・・・・・」 「私・・・・・・のようです」 神野は、力なく答えた。もう考える力さえ失っていた。追い討ちを かけるように警部が言った。 「署まで来ていただけませんか? 部屋も調べさせていただきたい のですが、よろしいですね」
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