プロローグ

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くそー、 この先メシを作るのめんどくさがって、弁当を買って食う生活はなんか嫌だな。 今度からちゃんと買い溜めとくか、 とか言うと、色んな人から注意されそうだ。 上島竜平あたりとか。 葛藤にもならない自問自答を繰り返し、とりあえず三日分の食料を買い、 家に帰って冷蔵庫に放り込んだ。 「……おっ、もうこんな時間か」 短針は六時を回っている。 急いで自転車を漕いで、猛スピードでぶっちぎる。 千里のやつ、拗ねてなきゃいいが。 自転車を漕いでいると、偶然にも噂の山ノ内公園を横切った。 横目でみれば、なるほど、 敷地は雑草でいっぱいなうえ、遊具は寂れている。 ブランコに至っては、吊っている鎖が一つ千切れている。 怪物が出てくるには、絶好のシチュエーションだな。 ま、だからなんだ。 出ないなら意味はない。 はい、解決。 そんなわけで、千里宅に到着。 「待ってたよユッキー。待ち過ぎて死ぬかと思った」 「死ぬな。生きろ」 女の子の部屋には入りづらいとか、世間の皆さんはそんな事を言っているが、 千里の部屋はむしろ入りやすい。 何故なら、女の子の部屋っぽくないからだ。 カーペットの部屋に、テーブル代わりにちゃぶ台、クローゼットの代わりに和箪笥(わたんす)を置くという、 時代が錯誤している部屋である。 「……なんか一際目立つ料理があるんだけど」 ご馳走が並ぶちゃぶ台の中心に、小さい小皿に、トマトまるまる一つが載っている料理なんだが。 「生トマトだよ!」 「マジでただのトマトだろこれ」 「ちなみに食べ方は、へたをスプーンでえぐって、そこからすくって食べるんだよ」 「……美味いのか?」 かくして、俺と千里は、二人っきりの入学祝いパーティを楽しんだ。 調子に乗ってビールを開けてしまい、千里父からこっぴどく叱られたり、 悪ノリでまくら投げをしたりした。 そんなハチャメチャパーティが終わったのは、 十一時五十分だった。
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