深紅の薔薇

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 僕とあの人の思い出話をしよう。薔薇を愛し、その姿も薔薇のように美しかったあの人の…。  彼女の本当の名は、僕も生涯知ることが出来なかった。  思えばおかしな話だが、彼女はいつも「薔薇夫人」または「ローズ」という愛称で呼ばれていた。  美しい黄金色の巻き毛に、澄んだ湖のような瞳を持った天使のような人だった。  彼女の周りにはいつも笑顔があって、若き頃の僕は、遠くからそれを見つめることしか出来なかった。  
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