9/17 曇りのち雨

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 ……昨日書いた文を見たら、よく精神が持ったなと感心します。普段あまり文章を書かない私にしては珍しい事です。  双子を流産してから2年後、私は再び子供を授かりました。  今度は私が命名してもいいというので、私は迷わずに「静(しず)」と名付けました。雨宮の名から一字取った名前です。  無理して私の名前を使ったから、静一も静花も死んでしまったのかもしれません。これで、名前に厄がつくことも無くなるだろうと思いました。  今度は失くすことのないよう、私は自分自身と、周りに気を配りながら、毎日かかさず記録を取り、胎教に勤しみました。雨宮もできるだけ残業を控え、仕事を家に持ち帰って取り組む、という形をとってくれました。  こうして静は、静一と静花の命を背負い、私と雨宮の期待を一身に受けて、無事この世に誕生してくれたのです。  待望の3人目、静は男の子でした。  瞳こそ黒かったのですが、うっすらと纏っている産毛の色は抜け、肌も白く、髪も雨宮譲りの金色でした。瞳の色以外はすべて雨宮の血を受け継いだといっても過言ではありません。その小さな手のひらに触れると、静は小枝よりももっと細い指を丸めて、私の指を握るのです。なんてかわいい子なのでしょう。雨宮は少し遅れて病室に駆け込み、息を切らせたまま、静を抱きしめました。  静は新生児室で、他の子と一緒に並べられていても見分けがつくくらい、ひときわ輝いて見えました。長い睫も、小さな鼻の下にちょんとついた薄い唇も、私から生まれたなんて信じられない程に整っていて、それが誇らしく思えました。
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