9/15 晴れ

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 私はそれまで以上に見た目を気にするようになり、ぼんやり聞いていることしかなかった恋愛関係の話でも、友人たちと一緒に盛り上がることができました。それはとても新鮮で、充実した日々でした。それまで、人に対して恋愛感情など抱いたことがなかったものですから。  実習が終わった夜、彼から来た食事のお誘いメールに、私はすぐにOKを出しました。指定された場所は誰も行かないようなファミリーレストランで、雨宮はいつも学校で見かけるスーツ姿のままでした。彼は精一杯おしゃれした私を見て目を丸くし、「もっとお洒落な店を予約すればよかったかな」と、困ったように目を細めました。  雨宮との交際が始まったのはこの日からです。  都合があうたび、私は雨宮といろいろな場所に出かけました。時には雨宮の受け持っているクラスで起きた問題について朝まで議論したり、勉強を教えてもらったり、映画の上映中に雨宮が眠ってしまったことについてむくれてみせたり、それはとても甘く、幸せな日々でした。  ……同じ実習先の子が「王子様みたい」と評したように、雨宮は日本人離れした容姿を持っていました。いいえ、彼は純粋な日本人ではありません。3歳で両親を亡くし、日本に住む友人に引き取られた北欧人だということを、雨宮は眉ひとつ動かさず朗らかに言い、黒く染めているだけで、僕の本当の髪は金色なんだ、と付け加えました。
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