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お腹の中の子供が双子だということが判明したのは、妊娠が発覚してから7週目のことです。
男の子と女の子だと知らされ、私はそれをすぐに雨宮に報告しました。手を取り合って喜んだのが、つい昨日のことのようです。雨宮はすぐ、この子たちに「静一(せいいち)」と「静花(しずか)」と名付けました。雨宮が何日もかけて考えてくれた名です。いろいろ考えたのだけれど結局ひと回りして、ふたりの名前を一字ずつあてた名に決めた、と笑っていました。
雨宮はよく、編み物をしている私の膝の上に頭を乗せたがりました。そして私のお腹に耳をあてて目を閉じ、そのまま眠ってしまうのです。その寝顔を見ながら、彼の顔にかかるやわらかな髪を梳く、その時間が何よりも大好きでした。
毎日つけている日記帳を見ながら「どんな子が生まれるかな」と言う私に、雨宮はいつでも「君に似ていればいいな」と返しました。
私は、ふたりの遺伝子を持って生まれてくるなら、雨宮にそっくりな子がいいと思いました。どう考えても、こんなにみすぼらしい小間使いのような私の遺伝子より、彼の遺伝子のほうがずっと優秀だからです。きっとお人形のような子が産まれるはずだと、私は胸を高鳴らせていました。
男の子と女の子のこども服。
沢山のおもちゃ。
買い揃えた読み聞かせの絵本。
飾り付けた子供部屋。
それらが全部無駄になったのは、ふたりの名前を決めてから数日後のことでした。
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