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私の父は、ギャンブルが好きで 家にお金も入れずに 好き勝手に遊んでいる人だった。 そんな父を尻目に 母は お洒落もせず、 女手一つで 私と兄を育ててくれていた。 ある日仕事から疲れて帰ってきた母が、 テレビを見ながら 私に言った。 「もし…… お母さんがオムツをするようになったら お母さん 老人ホームに入るつもりなの」 そう言った母を見て 私は顔をしかめて、言い返した。 「何言ってるの? 私が、お母さんの面倒をみるよ! オムツも私が替えるよ」 「お母さんはね、 美穂に幸せになって欲しいの。 いつか大人になって 恋愛をして、 大切な人が出来たら その人と幸せに暮らして欲しいの」 「好きな人が出来たら、結婚はするよ! でも…… お母さんも一緒に暮らすって決めてるの! お母さんが、目を細めて笑った。 「それが嫌なんて言う人となんか 結婚しないもん」 大好きな母を置いて結婚する事は 私には考えられなくて 口を尖らせて母に文句を言った。 同居していた認知症だった祖母が 半年前に他界して 続けて祖父が 認知症になった。 夜遅くまで仕事をして その後、祖父の夜中の徘徊に着いて歩く母。 夕飯の支度に洗濯、 朝、早く起きて祖父の朝ご飯と昼ご飯を作って出かける母。 私はそれをずっと見ていた。 あの頃…… 母は、 きっと何もかも疲れていたんだ。 だから、同じ思いを私にさせたくなくて そう言いだした。 珍しく 引き下がらない母が もう一度 念を押すように言った。 「だからね、 お母さんが、もし 認知症になったり、寝たきりになったら お願いだから 老人ホームに入れてね。 ねっ!約束よ」 でも、 まだ小学生だった私は 目の当たりにそんな母を見ながらも 何年か先の未来になんて 全く興味もなくて 繰り返し約束だと言った母の顔も見ずに テレビを見ながら、頷いた。
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