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「そうそう! これ、お母さんが子供の頃ね」 また、同じ話…… 「うん。そうなんだ」 上の空で返事をした。 「あつ! 悪いけどこれ、郵便局に持って行ってくれる?」 いつ? どうやって郵便局に行けばいいの? わかってるよ。 母は足が悪いんだ。 でも、仕事してるの…… 昼休みも外に出れない会社。 私には行く時間がない。 仕事中、社長に頼んで郵便局に行かせてもらう。 小さなストレス。 「お母さんは、大切にしなきゃだめよ! 寝たきりになったら献身的な介護をしてあげるのよ。 同じ事何回言っても 聞いてあげなきゃダメよ」 会社の先輩が 私にいつも言うおきまりの台詞。 「あんたに、何がわかるの?」 心の中で言い返す。 認知症の祖父と祖母と同居していた私。 家族がどんな思いで 過ごしているのか私は経験してきた。 人に優しくするのって 難しい事なんだ。 大切な母親。 いつも私の心配ばかりしてる。 私の為だけに 私の幸せだけを祈って 生きてきたような母。 それなのに 苛々する気持ちが、どうしても止められなかったんだ。
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