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いつもの様に幼稚園に迎えに来てくれた母さん。
「タケル、帰るわよ。」
春の柔らかい陽射しの様に温かく、優しい母さんの声を聞くと、いつだって俺は笑顔だった。
母さんが大好きだった、若く、なにより美人なのが自慢だった。
でも俺の手を引く母さんの腕には、幾つもの痣があった。
白く細い腕に青黒く大きな痣──夏でも決して袖の短い服を着なかった。
そうやって隠してはいたが、痣は腕に留まらず、身体の至るところに在るのを、俺は知っていた。
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