OBASAN・化

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ずっと黒かった髪を染めてみた。ビューラーも持ったことのなかった私が、つけマツゲをしてみた。毎日ジャージみたいな服を、ひらひらふわふわな、ミニスカとブーツに変えてみた。 女として産まれたことを後悔した時もあったが、ようやく女としての楽しみを見つけたのである。その楽しみが、私を女でいさせてくれた。女と言う存在で在ることを、許してくれた。 それは私の生活において大切な糧であったし、仕事場と家を往復する灰色の毎日の中で、小さいながらも確実に彩りを与えてくれていた。 ずっとずっと横目で眺めていた、かつては諦めもした「オンナノコ」が、そこには居た。 某シャンプーのCMじゃないけど、「カワイイは作れる!!」のだ。 でも、そんな女の子になってみて気付く。 「ああ、可愛いを維持するのって、本当は案外大変なことなんだ」 普段しない化粧をするから、肌が荒れる。人付き合いが増えてきて、お酒の量も増えるとそれも肌荒れの原因だ。今まで化粧水を適当に付けてきただけの人間が、パックも覚えてクリームまで塗る。 伸ばしっ放しでとてもキレイとは言い難い髪を染めてみたはいいものの、時間が経つと根元から黒い髪が生え、いわゆるプリン状態になる。定期的に美容院に通うと、それだけでポンポンお金が手元からなくなる。 旬を過ぎたお洋服なんて、着てられない! 靴はヒールが高くてカカトが削れ、ワンシーズンしか履けないし、歩いているとすぐ疲れる。 楽しかった。でも、楽しみを継続させるのは、やっぱりタダじゃないんだ。 それでも、ようやく見つけたそんな楽しい毎日を諦めることはしたくなかった。仕事もがんばった。 じゃあ、諦めるコトなんて何もないじゃない? ……でも、女性には生死をかけた一大イベントに、『女』がどっかにいっちゃうことがある。 そう。 出産、育児、だ。
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