OBASAN・化

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十月十日をかけて、日に日に大きくなっていくお腹を見ていくのは、自分のことながら相当のショックがあった。 下腹だけ、ぽっこりと膨れるのが太っているお腹との違いだ。胎動が感じられるようになれば、赤ちゃんがお腹の中から蹴るとお腹の表面がボコッとふくらむ。 自分以外の命が居るということに、戸惑いと、嬉しさと、緊張感が産まれる。 体重を気にして、がんばって体形キープしていた頃の面影はどこへやら。服はすべて入らなくなり、背が低いことを気にしてヒール以外持ったことのなかった靴は、のきなみペタンコ靴になった。 仕事上がりに同僚や友達と飲んだり食べたりしていたオンナが、母になるのだ。 母親というものは、一朝一夕に『ハイ、ママよー』とできるものではない。 お腹にいると分かってから、一日一日をかけ、色んな経験を通してママになっていく。 現代医療においても、未だに出産時の死亡例はなくならない。 虐待や、核家族化に伴う孤独な子育ての現状、待機児童の未解消など、親が直面する問題は様々ある。 そうでなくとも、私も一人目の時は毎日まいにち「息をしているか」と四六時中確認していた。それだけ、不安になったものだ。(今思えば、あれが育児ノイローゼというものだったのですね) 何をするにも、子供中心の世界。 そりゃ、『オンナ』であることを楽しむ余裕なんてない! そうして摘み上がっていく母親の部分が、オンナであったかつての自分を過去へとおいやっていく。 おいやられ、諦めて、女を捨てていく。 そうして、『オバサン』になっていくのだ。 家族を大事にするために。家族を守っていく為に。必死になって、気付いたら自分の名前は呼ばれなくなり、○○のママさん、なんて呼ばれる。 たまに見つめる鏡の自分は、いつでも寝不足のクマがとれなくて、自分の食事なんかどーでもよくなっちゃって、ストレス解消と称してオヤツをつまむ。昼間のミヤネ○が社会の情報源。 ああ、あのキラキラしていた独身時代は、夢だったのかしら……そう、“昔は若かったのね” なぁんてセリフが胸の内でわいてきたら、オバサン化が進行している証。 (もちろん、これは私の経験によるひとつのパターンなだけであって、産んでからも産む前も、綺麗なママさんはたくさんおります!!)
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