下界

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「で?これはどういう事なんだ、ウィリアム。」  不機嫌な声が響く。  魔王とウィリアムの前には大きな扉がある。そこを潜れば『下界』に通じる扉だ。しかし、その前には満面の笑みで待ち構える悪魔がいた。金髪の髪は扉の色が反射して赤がかっている。なんとも不気味に見える。  魔王に対して頭を垂れて跪いていたウィリアムは顔を上げて囁いた。 「陛下を城から抜け出させようと手引をしようとしたら…奴がいまして…」 「何が手引きを…ですか?貴方は『下界』という場所の危険を知らないのですか?そういえば貴方は元々人間でしたもんね…あの恐ろしい勇者信仰が蔓延る『下界』に暮らしていたのでしたね。陛下を『下界』に連れて行く事に危機感も感じないでしょうね。だから私は貴方が嫌いなんですよ。」  息を切らさずまくし立てる悪魔にウィリアムは大きくため息を吐いた。最早彼に大してに喧嘩を売っている様な感じでしかないだろう。 「陛下の御命令なのですが…」  呆れたように呟くウィリアムに悪魔は冷たく光る赤い瞳を細めて睨みつける。彼はそれに応えるようにとても穏やかに微笑んでいた。笑顔が逆に恐ろしかったが…  そんな二人を横目に魔王は頭を抱えた。 (……この二人が揃うととてつもなく面倒臭いんだよな…) 「まあ、取り敢えず陛下が下界に『どうしても』降りるおつもりなのでしたら私もついていく所存でございます。」 「貴様はいらん。」 「貴方には聞いていません。陛下に赦しを請うているのです。」  ああ、煩い。  そう思いながら魔王はもう勝手にしてくれと溜息を吐いた。  結局この二人は数時間に及ぶ口論のもと、各々の武器を手にし始めた。流石に口論を止めるのが面倒だと思っていた魔王だったが、武器は仕舞えと言うと二人とも大人しくしたがっていった。
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