勇者と魔王

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勇者と魔王

 明るく暖かな光が灯っている世界。  見渡す限り頭、アタマ…あたま。呆れるくらい様々な色の頭が並んでいる。  浴衣姿のカップルが腕を組ながら仲良く歩いている。その少し前には家族連れが溢れんばかりの笑顔で並んで歩いている。少女は嬉しいそうに真っ赤な林檎飴を、少年は白く雲のように柔らかそうな綿菓子にかぶりついている。  平和だ、と暖かい気持ちで眺めていると隣でウィリアムが感心していた。 「賑わっているな…」 「おや、下界ではこのような馬鹿みたいな騒ぎが当たり前なのではありませんか?」  お前、どんだけ人間が嫌いなんだ。と尋ねるウィリアムに別にとだけ応えるロゼ。顔は笑っているのに心なしか声色が冷たい。  それに青筋をひくつかせるウィリアム。  なんでコイツらは…とレオンは呆れた。  人で噎せ返るような石畳の階段をゆっくり登っていく。  屋台が並んでいる。何かを焼く音、何かを作る音、何かを撃つ音…様々な音と声が喧騒を作り上げる。さらに、様々な料理の香りがする。  不愉快ではないなとレオンは思った。 「まずは寝床を探す所から始めますか。」  ロゼリアの一言に頷いた二人。 宿屋にあたる場所を探そうと石畳をゆっくり上り、広場に出ようとした。
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