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その表情は怒りにまみれている。付き合いの長い、燐ですら見たことのない顔だ。
「お前には、関係ないだろう」
裕二は軽く流してその場を凌ぐ言わば大人の対応をしようと試みる。
だがそれは今の光太郎には逆効果だったようで「俺達は、警察関係者に渡してくれって頼まれたんだ」と、半ば叫びに近い声を張り上げた。
「いつからアンタは警察関係者になったんだ?」
「何度でも言う。お前には、学生には関係ない」
「バカか!?」
そう一喝し掴んでいた手に力を込め、後ろに突き飛ばす。背後にいた渡真利と名乗った男がそれを受け止めた。
「アンタは……一体何なんだ?」
隠されていた、自分は裏切られていたという憎しみか。それとも、自分の父親が何者かわからない恐怖か。
そのどちらとも取れるように、光太郎の声は震えていた。
しかしその声に反応することなく、裕二は光太郎の脇を抜け、田畑の元へ向い、「内容を見せてください」と至って冷静な声で言った。
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