Code.2『プロビデンス・アイ』

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「あぁ……長い道のりだったな」  その表情に、先程の光太郎と議論を交わしたあの憤怒と言った感情は微塵も感じられない。 代わりに滲み出ていたのは、安堵に安心を重ねた、柔らかい豆腐のような表情だった。  ただ、優越感に浸っているのは向こうの二人だけ。〝コチラ側〟の人間は何一つ理解できていない。  各々に溜まり始めていた怒りと言う名の爆弾が最初に破裂したのは、燐にとって意外なとも取れる人物だった。 「いい加減にしろ!」  田畑だ。それまで割れ関せずと一言も喋っていなかった彼の言葉に虚を突かれ、静寂が舞い降りる。 それをタイミングと捉えたのか、田畑は更に怒りを言葉に纏わせてビッグバンを繰り返した。 「ちゃんとアンタの身分を証明して見せてくれよ。この子達は怖い目に合ったんだ。警察でもない奴等に、渡すわけにはいかない」  第一印象が自分達と精神年齢が近いと感じていたため、今の吼える田畑は――精神年齢が低いからなせる技なのかもしれないが――頼もしく、燐には見えた。
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