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「どうしても言えない事情がある、としたら?」
「だったら話は早い。アンタ等には帰ってもらって、直接警察へ届ける」
「詳しいことは言えないが、私達は警察と関わりがあるんだ。結果的に、そのメモリーカードは私達の元へ下る」
繰り広げられる舌戦、だが、祐二の言葉には、俗に言う〝ワガママ〟のような感情があるのではないか、と燐は感じていた。
待っていれば、手元に来る。時が経てば目的は達成される。ならば――
「手元に来るのを待てばいいじゃないか」
考えていたことを、燐は自然に口に出していた。突然の横槍に虚を突かれたのか少し戸惑うが、田畑に注いがれていた視線が燐に向けられるのを皮切りに、言葉が出された。
「無駄は省きたいタチなんでね」
向けられたその目はえらく鋭く、さながら獲物を追う鷹のような、そんな目だ。
ただ、何故か燐は怯むことはなく、言葉を続ける。
「さっきから聞いてたら、アンタが言ったことは感情に身を任せた自分勝手じゃないか」
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