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恐怖に触れたからなのか、女はこんな短時間で精神的に強くなるものかと、燐は驚愕した。
メモリーカードの映像を見て嘔吐した面影は一切残っておらず、堂々とした立ち振る舞いを演じていたからだった。
「ほう……」と裕二が小さく唸る。
常識に基づいた意見と個人の感情だけに頼った意見。その決着は、見るよりも明らかだ。
「……もう限界じゃないっスかね?」
止めは、それまで沈黙を貫いていた渡真利の言葉だった。
それを皮切りに裕二は深い息を漏らす。
同時に、終始浮かべられていた負の表情が消え去り、諦めの様な薄ら笑いの表情へと移り変わる。
「そうだ、な」
呟くその声にも、もう争いを増徴させるようなトーンはない。舌戦は、勝利と言っても過言ではない。
そして、求めていたその答えは、唐突に現れた。
「私達は、簡単に言ってしまえば、政府の人間だ」
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