Code.3『凶弾』

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 今から数分前、研究室での会話が、都市の流れる景色を基盤に、黒崎燐の脳内で再生される。 『君達を保護したい』  唐突に切り出されたのは、自分達の身の安全を確保する提案だった。  光太郎の父、岸波裕二が言うには、自分達が関わった組織は反政府勢力であるらしい。 過激派であるその組織は、顔を見た自分達を狙う可能性があるからである、と言った理由からだった。  反政府勢力、そんなバカな話だと突っ張ってしまえば簡単なのだろう。 しかし、それが有り得るのが今の日本の現状であり、その恐怖を感じた燐自身もそれを否定する気は無かった。  恐怖に身をさらされるくらいなら、守られていた方がマシ。  そんな至極平凡な思いを一番強く抱いたのは、美奈であった。  保護を求める美奈の表情には、裕二の意見に反論を述べた勇ましさは残ってはおらず、まるで乙女のような表情で頼んでいるのが燐には印象的に映った。
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