Code.3『凶弾』

5/87

327人が本棚に入れています
本棚に追加
/239ページ
 窓の外に視線を移しながら、最後に届いたメールの内容を思い出す。  最後に来たのは一週間前、正しい日は覚えていない。 だが、来たメールを削除する癖がある燐に確かめる方法は存在していなかった。  内容は、火星の気候や仕事の進行具合等と言った、いつも送られてくる内容となんら変わりはない。 添付されていた画像は、新たに建設が開始された居住区の土台の画像。 その手前に両親が肩を組んでいたのが非常に印象的で、鮮明に脳内で表示される。  そしてそれから――隅っこに追いやっていた情報を引き出そうとするが、それまで変わり映えしなかった外の景色に異質なものが出現し、一切の思考を中断させた。  周囲の雰囲気と同化できていない、どこか浮いている、ドームのように天井が丸くなっている建物。 高さもそれなりにあり、十五メートルは有に越していそうだった。
/239ページ

最初のコメントを投稿しよう!

327人が本棚に入れています
本棚に追加