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着々とその建物に近づく。禍々しさを増してゆくそれに目いっぱい近づくと車は唐突に停止した。
「さあ、着いたぞ」
その言葉を合図にドアが開き、下車が促される。それにに従うままに足で地面を踏みしめて、燐は改めてその建物を見据えた。
「ここは……?」
次点で降りた美奈が、夕陽を遮るように掲げた手の隙間から、同じそれを見上げ、問うた。
夜のなり始め、太陽と月が入れ替わる直前の空は、まるで炎がそのまま落とされたように濃い緋色で埋め尽くされつつあった。
時間の流れの速さを肌で感じながらも、裕二の返答に耳を傾ける。
「プロビデンス・アイの本部さ」
「随分と、目立つように出来てますね」
車から降りた光太郎が、開口一番に言った。確かに光太郎の言うとおりで、機密組織と言う割に、間抜けすぎる。
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