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――この世界の空は、晴天で蒼が広がっているのに、どこか淀んでいるようだった。
宇宙暦三年。移民計画開始と同い年で節目に当たる七月十一日。
飛び出ているように見える3Dテレビで流れてくるのは、全国共通の祝日となった〝宇宙の日〟の特別番組で賑わっていた。
当時の古臭く感じる音声、オランダ発案の計画【マーズ・ワン】で始めて火星に飛び立つ人類を乗せた宇宙船の映像。
その二つのオンパレードだ。
朝から何回も見ているこの映像。いくら宇宙に憧れていて火星に行きたいとは言え、昼を過ぎると流石に飽きが来る。
丁度映像が終了し、番組のゲストである少女がコメントし始めた所で黒崎燐(くろさきりん)はテレビの電源を落とした。
「せっかくの休日、無駄に使っちまったな……」
ため息混じりに呟いた声は、四畳半の狭い寮に蔓延した。
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