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ふと壁掛け時計に目をやる。
骨董市で掘り出した古時計は、もうすぐ昼の十二時の訪れを知らせようとしていた。
正午までの休日。
休日と銘打っているものの、休憩と例えた方がしっくりきた時間に燐は改めて無意味さを抱き、更にその僅かな休憩すら終わりを迎えようとしている。
深いため息をつかずにはいられなかった。
それでも、時は止まることを知らない。
例え電池が無くなって時計が止まっても、川に流れる水のようにそれは移り変わる。
ただ、幸いこの古時計の命はまだ尽きないようだった。
――三、二、一、零。
秒針が長針を追い越し、そして十二時を知らせる鐘が鳴り響いた。
学校が開始する鐘だ。学生の身分の燐としては、鬱陶しくてたまらない、不快な音。
「……さて、と」
重くなった体にムチを討ち、何とか体を持ち上げる。その足で燐は徒歩五分の校舎へ向かった。
黒髪のボサボサの寝癖は、直さないまま。
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