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埼玉県立紅南高校。
第三次世界大戦の影響で、ほんの十年ほど前までは復興がままならなかった首都圏だったが、火星へ行くステーションの建設が決定、それに伴い復興は加速。
現在ではこうして学校が新設されたり、リニアモーターカーが配備されたりと、全体的に日本は着々と戦前の活気を取り戻しつつあった。
この高校の二期生として入学した燐は、二年目の高校の生活を送っていた。
「あ、おはよう燐。今日も寝癖酷いね」
二年三組の自分のクラスに入ると、燐の背後から笑いながらの挨拶が投げかけられる。
振り向いたそこにいたのは、さらさらとした、赤みがかかる茶髪が印象的な、クラスメートの神田美奈(かんだみな)の姿だった。
「おはようさん。あと毎度のことだが、寝癖はほっとけ」
寝癖を直さないで登校することが〝ポリシー〟のようになっている燐。
いつものやり取りになっているお決まりの言葉を投げると、早々に自分の席に座る。
ふうっ、と軽く息を吐くと、その延長線上としてか、自然と「めんどくせぇな」と燐は不満を漏らした。
「本当だよ」燐の机に腰を掛けて、美奈は同意するように頭を三回縦に振った。
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