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途端、小さなレンズから放たれた光は壁に直撃すると、その光が織り成す幻想を生み出していた。
映し出されたのは文字、日本語で書き尽くされた、横書きの文章の塊だ。
縦三メートル、横四メートル。それほどの四方に隙間なく埋め尽くされた文字達は、読みやすさなど皆無の不親切な出来だ。
しかしそんな不条理の中で、一番最初の題名と思われる場所だけは確りと強調してある。
その為、この文字の羅列が何を示すのかは、燐だけではなくその場にいた美奈にも例外なく伝わっていたことは言うまでもない。
続くかと思われた沈黙を破り、その文字を最初に読み上げたのは、田畑だった。「活動予定」とあっけらかんと言う。
続いて光太郎が「多分、美奈のお父さんや、お前達が言う雛菊って人らの物だと思う」と付け足した。
恐る恐る、しかし確実に燐は視線を移し、内容を把握しようと試みる。
それは至って簡単な内容だったが、理解してはいけないような内容だった。
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