Code.2『プロビデンス・アイ』

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 美奈が呟いた言葉がきっかけになり、燐はある神話を思い出した。  全知全能の神、ゼウスの失態。  パンドラに送った贈り物の中に、決して開けてはいけない〝箱〟を送りつけてしまい、パンドラは禁を破って箱を開いてしまう。  箱からは〝全ての悪〟が解き放たれ、ありとあらゆる災いが世界を襲う。この話は――そうだ。 「パンドラの箱……か」  知らず知らずのうちに燐は言葉に出していた。誰かに伝えたかったのか、共感して欲しかったのか。 それは混乱が頭の中で渦巻く燐自身にも理解しかねた。 「開けちゃいけない箱。確かに、その通りだな」  同意したのは光太郎だ。  これからどうするのか。警察へ駆け込むか、メモリーカードを結局解読出来なかったと偽り、知らぬままにするか。  ただ、これと関わってしまった以上、今までの普通の生活を送れる可能性は、限りなく低いだろうと予感していた。
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