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一陣の風の流れを肌で感じる。その風が来た方向を見ると、ジアが丁度窓を開放していた。
神様がいるのなら、正しい道を教えてくれ。
願うも返事をするわけはなく、代わりに蜩(ひぐらし)の寂しげな泣き声が響き渡っていた。
※
オートパイロットに設定している車は、淀み無く進んでいる。
至って順調なドライブだが、目的が果たせないドライブは対照的に出口の見えない迷路に迷い込んだ気分に、渡真利嘉孝は陥っていた。
そんな折、胸ポケットに入れた携帯電話がバイブレーションを起動させ、エリーかと思ったのも束の間、表示されていた発信者の名前は、純粋な日本人の名前だった。
警察に勤めている、学生時代の友人だ。
「……もしもし」
不機嫌に、かつぶっきらぼうに電話に出る。
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