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滞りなく進んだ車は、三十分もすれば目的の地に着いた。
裕二が早々に車から降りると、渡真利も続いて降車する。
裕二の背中を視界に捉えながら、渡真利は技術開発研究所なる建物を見た。
怪しい。政府直属の研究所だと言うことを除いても、どこか如何わしい。
しかしそんなことは微塵も気にしないのが、岸波裕二と言う男である。
ずかずかと敷地に入り、扉まで足を進める。
渡真利も続くとその瞬間、人物認証機の作動音が響き渡った。
人物認証機とは、設置された場所を人間が通るとセンサー反応して来客を知らせる、インターフォンのような役割を持った機械だ。
『……どちら様で?』
何処からともなく声が聞こえてきた。中年の、男の声だ。
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