1人が本棚に入れています
本棚に追加
「偶然にしちゃあ、できすぎてますね。まるで安っぽいドラマのようだ」
「気に食わんのだったら、よそに行くが」
「まあまあまあ」
いがみ合う二人の間に、天童が割って入る。
「ようするに、甥ごさんが時航警察官の候補になったこと自体が不可解であると、そのように思われたわけですね」
「ま、そういうこった」
一瞬、怒りに顔色を上気させた豪田だったが、すぐに醒めた顔を天童に向けると、言葉を続けた。
「どう考えても、これは異常な出来事だ。しかもそれだけじゃねえ、村雨の命が狙われているらしいと非公式に忠告されたんだ」
「いったい、誰にです」
「丸山警視監殿だよ」
「警視監というと、警視総監に次ぐナンバーツーではないですか」
ミヤケンが、驚いた声を出した。
「桜田門の内部には、新参の時航警察のことをこころよく思わねえ連中もいる。それで、推進派と反対派の二つの勢力に分かれちまってるんだが、警視監殿はその中でもアンチ時航警察の急先鋒と言われているお人だ」
「警察の上層部も動いてるとなると、何やらキナ臭い気配がしますな」
腕組みをしながら、天童が呟く。
「いっそのこと、村雨を引退させちまったらどうです」
「それができるのなら苦労はしない」
ミヤケンの提案に、豪田が首を振った。
「奴は、有頂天になっちまって聞く耳を持たない」
「ならば、警視正殿は何がお望みで？」
「奴を守護してほしい……」
「しかし、養成学校は全寮制でがしょう？いわば、塀の中に入っちまってるわけで、外からじゃ手出しの仕様がありませんぜ」
「そんなことは、分かっている。警視監殿の情報によると、今季の時航警察候補生の中に反対派のＳ(スパイ)を潜り込ませてあるとのことだ」
「Ｓを？」
「澄麗(スミレ)という名の女だそうだ、彼女と連携して村雨を守ってくれ！」
最初のコメントを投稿しよう！