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通称『五稜郭』と呼ばれる桜田門ポリスセンタービルは、その別称が示す通り真上から見ると五芒星の形をしている。数世紀前のペンタゴン(アメリカ国防省)をモデルにしたとも言われており、城壁のように薄いビルディングが五層に連なった構造になっていて、どれほど屈強なテロリストであろうと中枢部までたどり着けない仕組みになっていた。
突然降り始めた篠突くような雨に、革ジャンにGパン姿のミヤケンは瞬く間にずぶ濡れになった。
「午後一時から三十分間、レインマーキング(人工降雨)を実施すると告示されてただろう?天気予報を見なかったのか」
午後一時からきっかり三十分後、雨が止んだのと同時に現れた天童鷹彦が白い歯を見せて笑った。濡れ鼠になったミヤケンの真黒な革ジャンと対照的に、艶やかな光沢を放つ純白のシルクコートを羽織っている。
「オメ~が、午後一時にここで待ち合わせしようって言ったんじゃねえか!」
ビルの入り口に掲げられている、『櫻田門』と書かれた巨大なケヤキの表札を指差しながら、ミヤケンが激怒して言った。
「上司に向かって、オメ~などという言い草はいかがなものか。いかに君が粗暴でずさんな育ち方をしていようとも、その言い方は許される物ではない。撤回したまえ!」
「ゴチャゴチャうるせえや、このニヤケ野郎!知っててわざと、この時間を指定したんだろう」
「いやしくも探偵たる者、それくらいの情報は事前に調べておくべきだろう、君ィ……」
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