時航機の謎 其の参

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渡された新聞をグシャグシャに丸め、道路に叩きつけるミヤケンを、なだめるように天童が近寄った。 「今の男が、依頼対象者である村雨かい?」 「そういうこった、相変わらず厭な野郎だぜ」 「どこかで見たことがあると思ったら、カントリーベアジャンボリーに出てくる、間抜けな熊の顔にそっくりじゃないか」 「ヘンリーって奴かい?」 言い得て妙な表現だと思いながら、ミヤケンがゲラゲラと笑った。 「君が言うほど、悪い男でもなさそうじゃないか」 「人を顔つきで判断しちゃいけねえ、一見、善良なお人好しに思えるが、その裏にはドス黒い狡猾な牙を隠し持ってるのさ」 「それにしては、君と妙にウマが合うようだが」 「冗談じゃねえ!奴は誰からも相手にされなかったから、仕方なく俺がチームを組んでやってたんでさあ」 吐き捨てるようにミヤケンが言った瞬間、今の出来事で頭に血が昇ったせいか、それとも雨に濡れて冷えたせいか、朝から患っていた腹痛がぶり返してきた。 「イタタタタタタッ……」 「大丈夫かい?」 下腹を抱えてしゃがみ込むミヤケンを、天童が心配そうに見下ろしているところへ、三つ編みの髪をおさげにしたジャージ姿の小柄な少女が近づいてきた。 「救急車を呼びましょうか?」 シャンペンゴールドの眼鏡フレームに指を掛け、ミヤケンを観察するように眺めまわした後、さらに言葉を続ける。 「それとも、保護施設に運びこんだ方がいいかしら」 「馬鹿野郎、俺はホームレスじゃねえっ!」 ミヤケンが、忌々しそうに少女を見上げた。 「それより桜田門から出て来たようだが、小学生のお嬢ちゃんが何の用だ?迷子にでもなったか」 「私はこう見えても、三十路よ。ドワーフ症候群の犠牲者なの」
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