時航機の謎 其の肆

3/7
前へ
/25ページ
次へ
「好きで、こんな体になってるわけじゃないわ」 「そいつは失礼した、その未熟な体さえ見なければ、あんたは立派な淑女だ」 『バチンッ!』 霧に包まれた無重力空間一杯に、ミヤケンの頬が張られる音が轟いた。 「内輪もめは、やめようじゃないか」 天童が、執り成すように口を挟む。 「我々は、村雨をガードするという、共通の目的を持ったチームなのだから」 天童の真摯な声を無視した澄麗が、冷笑を浮かべながらミヤケンの股間を指差す。 「あなたのその、老朽化したイチモツよりはマシよ」 「見たのか!」 ミヤケンが、驚いたように眼を剥いた。 「いや~、気絶した君をここまで運び込むのは、苦労したよ」 「誰が、そんなことを頼んだ?」 屈託のない笑顔を浮かべる天童を、ミヤケンが三白眼で睨みつけた。 「だってほら、雨で冷えた体を温泉で温めれば、君の腹痛も治るだろうと思ってさ。余計な御世話だったかな……」 「とんでもない!感謝してるよ、あんたが慈愛に満ちた天使に見える。しかし、気絶しているのをいいことに、無断で人を裸にひん剥いたとなると話は別だ。しかも、女の前で!」 スパハウスのトレードマークがついた、大きめのトランクスにミヤケンが目を落とす。 「職業柄、検死などで男性器は見慣れていますから御心配なく」 ビジネスライクな口調で答える澄麗に、ミヤケンが食って掛かるように言葉を続けた。 「生憎だがな、あっしのアソコはまだ機能不全には陥ってねえんだ。クソッ!それより、このたるんだ腹を見られたのが男子一生の不覚だ」 「誰も、気にしちゃいないわよ」 「そうさ、君は中年……いや、すでに初老の域に達しているのだから、贅肉が付いていて当たり前だ」 「気休めはよしてくれ」
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加