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「好きで、こんな体になってるわけじゃないわ」
「そいつは失礼した、その未熟な体さえ見なければ、あんたは立派な淑女だ」
『バチンッ!』
霧に包まれた無重力空間一杯に、ミヤケンの頬が張られる音が轟いた。
「内輪もめは、やめようじゃないか」
天童が、執り成すように口を挟む。
「我々は、村雨をガードするという、共通の目的を持ったチームなのだから」
天童の真摯な声を無視した澄麗が、冷笑を浮かべながらミヤケンの股間を指差す。
「あなたのその、老朽化したイチモツよりはマシよ」
「見たのか!」
ミヤケンが、驚いたように眼を剥いた。
「いや~、気絶した君をここまで運び込むのは、苦労したよ」
「誰が、そんなことを頼んだ?」
屈託のない笑顔を浮かべる天童を、ミヤケンが三白眼で睨みつけた。
「だってほら、雨で冷えた体を温泉で温めれば、君の腹痛も治るだろうと思ってさ。余計な御世話だったかな……」
「とんでもない!感謝してるよ、あんたが慈愛に満ちた天使に見える。しかし、気絶しているのをいいことに、無断で人を裸にひん剥いたとなると話は別だ。しかも、女の前で!」
スパハウスのトレードマークがついた、大きめのトランクスにミヤケンが目を落とす。
「職業柄、検死などで男性器は見慣れていますから御心配なく」
ビジネスライクな口調で答える澄麗に、ミヤケンが食って掛かるように言葉を続けた。
「生憎だがな、あっしのアソコはまだ機能不全には陥ってねえんだ。クソッ!それより、このたるんだ腹を見られたのが男子一生の不覚だ」
「誰も、気にしちゃいないわよ」
「そうさ、君は中年……いや、すでに初老の域に達しているのだから、贅肉が付いていて当たり前だ」
「気休めはよしてくれ」
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