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羞恥心に顔を歪めるミヤケンに、澄麗が同情したように言った。
「あなたって、割とナルシストなのね。でもそのお腹、自分で思うほど出ちゃいないわよ。もっとも、腹筋で割れたボディービルダーのお腹には程遠いけれど」
澄麗の言葉に、自分の腹に目を落としたミヤケンは、思わず「アッ!」と声を上げた。皮下脂肪の付いたビールっ腹が、確かにへこんでいたのである。
「ホ、ホントにへこんでやがる」
嬉しそうに目尻を下げるミヤケンの腹を、これまたニヤついた笑いを浮かべながら、天童が撫でさすった。
「な、何しやがる!」
「君が患っている腹痛と下痢のおかげで、腹がへこんだんだよ。まさに怪我の功名って奴だね」
「そんな、馬鹿なわけねえだろう」
そう言いながらも、自分の体を再チェックしたミヤケンだったが、腹部だけではなく胸部まで引き締まったように感じられた。
「それより、村雨警護の打ち合わせはどうするの?あたし、こんな所でノンビリしている暇はないんだけれど」
冷めた声を出す澄麗の前で、天童が大げさな仕草で手をポンと打った。
「そうだ、肝心なことを忘れてた。このプロジェクトはトップシークレットだからね、貸し切りの屋上ジャグジーで、富士山でも眺めながら密談しようか」
「金持ちのパーティーじゃあるまいし、悪趣味だぜそれは。だいいち、のぼせた頭で良いアイディアやプランが浮かぶと思うか?」
「なるほど、それは至極真っ当な意見だ」
天童は顎を撫でながら考え込む素振りをしたが、すぐにまた白い歯を見せて言った。
「この地下に、こじんまりとしたバーがある。そこで、酒でも飲みながら話そう」
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