時航機の謎 其の肆

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「宮田様へのスペシャルドリンク、アルマニャック・オールドヴィンテージXOで御座います」 テーブルに置かれた、チューリップ型の大きなスニフターグラスの底には、僅かな琥珀色の液体が勿体ぶったように注がれていた。ミヤケンが鼻を近付けると、破流静香(はりゅう しずか)に飲まされたコニャックと同じ匂いがした。 「クゥ~ッ、五臓六腑に染み渡るね」 アルマニャックをキュッとあおったミヤケンが、しみじみと目を閉じて独りごちる。 「我が儘を言わせてもらえば、もっと景気良くドボドボ注いで欲しいもんだね」 「当店は、スコットランド辺りにある田舎パブとは違いますので」 ウェイターにお代わりを命じながら、相沢が厚めのメニューをテーブルに置いた。 「御婦人のお飲み物は、何がよろしいでしょうか」 「あたしはドライマティーニを頂くわ、ただしオリーブの代わりにパールオニオンを添えてちょうだい」 「かしこまりました……」 粛然と頷く相沢を尻目に、ミヤケンが忍び笑いを漏らした。 「これだから、素人のお姉ちゃんは……だったら、マティーニじゃなくて最初からギブソンを頼めばいいじゃねえか」 「確かに、マティーニとギブソンのレシピは同じで御座いますが」 顔を赤らめる澄麗をチラリと見ながら、相沢が口を挟む。 「製造法が違います。マティーニはステアするだけですが、ギブソンはシェイカーを使いますから」 「そ、そうよ、生半可な知識で人を見下さないでちょうだい」 ホッとした顔で肩をそびやかす澄麗に、ミヤケンがいつくしむような視線を送った。 「こいつは、知ったかぶりをしたあっしが悪かった。それにしても、そちらのマスターはプロフェッショナルだね。普通のバーテンなら、彼女を未成年者だと勘違いして、ホットミルクを勧めるところだが」
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