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俺はその曰く付きの占い師、和久津 寄依の情報を得る為に、情報屋、羽原 千鶴(はねはら ちづる)の事務所に来ている。 天王寺の街の、俺が勤める事務所と似たような立地、羽原の事務所はある。 平日の昼間なのに、人通りが多くない。 まぁ都会だからといって、街中のどこでも賑わっているわけではないので当たり前ではあるが。 それはさておき。 「やあやあ欲島(よくしま)君、よく来てくれました。さぁどうぞどうぞ」 「そのアダ名にルビをふるんじゃねぇよ! 思わずそれが本名みたいになるじゃねぇか! 俺の名前は屋久島(やくしま)だ!」 「何を今さら。私の知る限りでは欲島と呼んでいる人の方が多いですよ?」 「いや、そんなことは……ない」 ……はず。 昌(あきら)とか森野(もりの)とか渡部(わたべ)さんとか…… ちゃんと呼んでくれてたはず。 でも、情報屋の羽原に言われてしまったら自信無くすんだよな…… 「少なくとも、そのアダ名を広めた人の友達、ざっと五十人は欲島と呼んでますね」 「あの嘘つき少女めが!」 俺と無関係なところでそのアダ名を広めんじゃねぇよ! 知らない人に変態呼ばわりされても困るわ。 それが野郎だった場合は特にな。
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