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1.奇跡を見た男
1974年10月30日。その日地球上で最も熱かった場所がどこであるかを山井信吾は知っている。気温が何度だとか、湿度が何パーセントだとか、そう言う事とは一切関係無く、その日世界で一番熱かったのは間違いなくザイールの首都キンシャサであった。
まだ夜明け前だというのに、大地は熱を帯び、人々は何かに取り付かれたように踊り、狂い、叫んでいた。
”アリ、ボンバイエ!(アリ、やっちまえ!)”
その熱狂的な大合唱は今も山井の耳にこびり付いている。
高校を卒業後、親の反対を押し切って貧乏海外旅行に出た山井は、6ヶ月の月日を経てアフリカのザイールに流れ着いた。そしてそこで目撃したのだ、後に”キンシャサの奇跡”と呼ばれる歴史的な闘いを。
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