第1章

4/6
前へ
/12ページ
次へ
「兄さん!!水沢さんも帰っちゃいましたよ!!起きてください!!風邪、ひいちゃいますから……寝るのなら寝室に行って下さい!!」 「……んっ……うう……んあっ、ふわぁ~~」  心地よい気分だけど、ユウが起こしているのに気が付き目を擦りながら背伸びをする。目に入るのは少し不機嫌そうなユウの姿。 「すまん。疲れが溜まっていたみたいだ……今、何時だ?」 「もうすぐ15時です。ホント、ぐっすりでしたね……」  15時……俺が最後に時間を確認したのは10時だったから5時間も寝ていたのか。やけにスッキリしていると思った…… 「って……ユウ、すまん!!昼飯食ってないよな?腹減ってるだろう?すぐに用意する!!」 「いえ……。水沢さんが、帰る前に支度してくれて一緒に食べましたから大丈夫です」  ……あおいって料理出来たっけ……?あいつ、料理は苦手じゃなかったか……?大学時代は、よくアイツの飯を作ってやっていたと思うんだが…… 「その飯……あおいが作ったのか?」 「いえ。水沢さんは、料理が苦手だそうで出前を頼みました。お支払は、兄さんの財布から……」  うん……。やっぱり、あおいだ。あいつ……人の金だと思いやがって……。 「すみませんでした。兄さんの財布から支払うと知っていれば止める事も出来たんですけど……」 「いや、気にするな。逆にあおいの奢りとかじゃなくて助かったとも言える。あおいの奢りだと、その後に3倍返しさせられるからな……。」 「でも、兄さんは私の生活必需品とかで結構な金額を支払っていただいているのに……」  コイツは、本当に面倒な性格をしているらしい。少しは、あおいのガサツさを見習うべきかも知れない。いや、ほんの少しだけだけど……見習いすぎるのも問題だ。 「兄に対しての気遣いは無用。少しは甘える事を覚えろよ」  何度も何度も繰り返しているやり取りだが……今はまだ、ユウから他人という気持ちを消し去ってやらなければならないと思う。だから、俺は何度でも何度でも同じ事を繰り返しながらユウに伝える。俺はお前の兄なんだと。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加